音符の入る帯のこと ― 作楽「アヴェ・マリア」

音符の入る帯のこと ― 作楽「アヴェ・マリア」

「この帯の楽譜なんですか?」。
織り上がったばかりの帯を手にした若手スタッフから、
そんな質問がきました。

この帯、設計自体は少し昔のもので、
作楽シリーズのひとつです。

社内からは一旦完全に無くなっていた時期があり、
ここ最近、綾紗で復刻していたばかりの帯。

もしかして、知らないスタッフもいるかもしれない帯です。

 

楽譜が目の前に来たため、答えには一瞬詰まりましたが、
楽譜を見て、『そうそうアヴェ・マリア』ちゃんと返事はできました。

帯を改めて手元に置いて、よく見ると、
やっぱり変わったデザインだと思います。

音符が帯の文様として織り込まれ、
曲の抑揚と流れを表すように譜面を波に見立てる。

初めてこの帯を見た方は、
まず一瞬「これは何の文様?」となると思います。

織の設計のこと、制作でどこが難しかったかは、
今でも明確に覚えています。

ただ、なぜアヴェ・マリアだったのか、
それが今も出てきません。

「何となく」ではなかったのは間違いないのですが、
少し気持ち悪い状態が続いています。
困ったものです。

 


ちなみに、今回新たに織ったバージョンの裏地は
五線譜にしようと考えています。

この帯を制作してから、
爆発的な人気があったわけではなく、
気がつけば無い。

その度に少し配色を変え、
製織し続けています。

長い目で見ると、
時代が変わっても続く普遍性を持ったデザイン
もしかして、そうなのかもしれません。

モノづくりをしている立場からすると、
そういう帯が増えるのは、素直に嬉しいことです。

あとは、楽曲を選んだ理由が出てくると完璧なんですが。

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記事執筆者 / 五代目仙福屋宗介

となみ織物5代目(専務)