夏織物の代名詞といえば、透け感が美しい「紗」が挙げられます。
古くから、その涼やかな風合いは夏の装いに欠かせないものでしたが、
同時に「紗は夏だけのもの」という、当然の季節の制約もありました。
数十年前、となみ織物は、夏織物をほとんど織っていなかったこともあり、
新しい『夏』の織組織を模索していました。

その中で作り上げた織物が『総紗縫(そうしゃぬい)』です。
総紗縫は非常に特長的な織物です。
通常の紗は透け感があるため、柄の表現力としては粗くなりがち
その点、総紗縫は紹巴織と同じ細かさを保つジャガードを使うため、
非常に緻密な表現が可能です。
また、紗が夏限定のところ、
総紗縫の場合、綟り点は3倍近くありますので、
綟りながらも透け感が絶妙なため、通年仕様可能です。

さらに、織組織的に遊びがあるため、多彩な糸種を使い、
様々な表情を持った、派生的な織物を生み出すことができます。
この色数の帯も総紗縫です。
綟り織の範疇にありながら、この独特な織物になったわけは、
その総紗縫が生まれたキッカケから。

総紗縫の根本にある技術や本質は、
ある遺跡から発掘された、古代の裂地にあります。
それは、現代の技術をもってしても、まともに織り進めることが困難なもの。
複雑な綟り織の構造を持っていました。
『この裂地は、一体どうやって織られているのか?』
と、その裂地を復元しようする過程で培われた技術、
考え方がこの総紗縫の元にあります。
そのため、従来の紗とは異なる進化を遂げたと思っています。

そのため、織組織の完成から何十年経っても、未だにコピーはされていません。
このベース部分にある設計思想を理解されない限り、まず無理だと思っています。
なかなか、ここまで言い切れる織物はありませんが、
それだけ特別な織物です。













